
駅前の市庁舎横のプレゼーピオ
私がこの町、カモッリを知ったのは迷宮都市ベネチアの魅力を教えて貰った篠利幸さんが、リグーリア海岸で一番好きな町はカモッリだ、ベネチアに雰囲気が似ていると書かれたウェブサイト「イタリア紀行」を読んだのがきっかけでした。そして時を同じくして、キリストの像が海に沈められている島があるとテレビで放映されているのを見て興味を持ったからでした。何しろ二つの情報がカモッリで交錯しているのですから、いつか行きたいとずっと思っていたのです。そして地図を広げてみると、なんと今回行くチンクエテッレへの鉄道路線上にカモッリの町がある。「いつか行きたい」が「行こう」に変わったのは言うまでもありませんでした。

船乗りのプレゼーピオ
カモッリは漁師町~なのでこんなプレゼーピオも…
キリストの像が沈められているのはカモッリから船で行くサン・フルットゥオーゾ修道院のある島の海で、キリスト像はこの海域で亡くなった人の魂を慰めているのだそうです。日本では、特にお盆近くになると海は死人が足を引っ張るから近づくなという言い伝えがありますが、それとは何だか対局にある気がして、死者への深い思いを感じました。もっとも日本のその言い伝えは、お盆になると海が荒れて危ないから警告のためのようですが、それでも死者が現世の者をあの世に連れて行くとはなんとも恐ろしいお話ですよね…。

海岸の突端にある聖マリア・アッスンタ教会
さて、そのサン・フルットォーゾ修道院行きの船の乗り場は見つけましたが、切符売り場は閉まっていて、近くの人の聞くと、「船専用の案内所」があるからそこで聞けといいます。船着き場の端っこにあるその案内所を訪ねてはみたものの、天候次第で船の出航はどうなるか分からないということに変わりはなく、そんな中、真夜中のミサのポスターを見つけたのでした。詳しい話を聞こうと思い、再度案内所を訪ねようとしていたとき、ある日本人のご夫婦に出会ったのです。

カモッリの船の専用案内所
最近のイタリアでは、どこに行っても韓国や中国の人たちを見かけるようになりましたが、さすがにこのカモッリでは一度も会うことはなく、このご夫婦と会った時も直感ですぐに日本人だと分かりました。お二人も私を見て、同じ思いを抱かれたようで、「日本の方ですよね?」と声を掛けて頂きました。この町で日本人と会うのは初めてだと言われるので、ご旅行ですか、と聞くと何とこのカモッリに住んでおられるとか。もう驚きました。後でそのいきさつなど詳しいお話を伺うことになりましたが、とりあえず私の目的を聞いて、そんな船が出ていることは知らない、もっと詳しいことを聞いてあげようと、わざわざ一緒に案内所を訪ねた下さったのです。

ご夫婦とお会いした場所
そして分かったのが、件のミサの詳細でした。時間が遅いのを心配して、私なら聞いてもとてもとても理解できなかったことまで担当者に質問して、説明して下さいました。最終的に午後7時の天候で催行を決めるとのこと、もし、中止なら私の宿泊するホテルに電話を掛けて知らせるということまで交渉して下さって、ほんとに助けて頂きました。結局船は出ませんでしたが、このご夫婦から受けた温かい親切が胸に響きました。誘って頂いてコーヒーもごちそうになったのですが、話は尽きず、すっかり日が暮れてしまいました。旅行中何か困ったことがあれば何でも相談するように、車もあるから行けるところならすぐに駆けつけるからと連絡先まで教えて下さってどんなに有り難かったことか知れません。たった一日しか滞在しなかったリグーリアの小さな町が、こうして思い出深く、忘れられない土地になったのでした。

日本人のご夫婦と(*^_^*)
お互いにメールアドレスや電話番号を交換して名残を惜しみましたが、お二人が、「イタリアに住んで一番良かったことは何ですか」という私の質問に、「日本にいる時のようにあくせくせずに済むこと。出来ないことはそれでいいと思えること」とおっしゃったのが、お二人の優しい笑顔と共に今でも心に残っているのです。